生物と無生物のあいだ 福岡伸一

講談社現代新書(200705)777円◆1/14(月)@文教堂書店西川口駅前店
 非常に面白い。
 一利ない帯は取ろう。
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  • いろいろ示唆される。この、意図的に書かれていること以外に示唆されるということ自体、優れた書き物の特徴の一つといえる。
  • 著者の生物観に基づくなら、ゲイ遺伝子などありえない。単一の原因を探すことがすでに機械的生命観に基づく。(「同性愛」という単一の分類があると思うこと自体すでに政治的でもある。)
  • 内実をつねに刷新され、ただフォルムのみが維持されるこの生物体を、読まれることによってかろうじて成立する「作品」と較べてみること。生物について記述する時、それが天文学的数字を必要とすることを著者は示して、むしろそれは「生物学的数字」と呼ばれるべきだというのだが、マラルメから宮沢賢治まで星と天空の喩で語られてきた作品をこのような生物として見なしたとき何が言えるか。
  • 著者はマウスの胚を操作して遺伝子の欠損がどんな結果を惹き起こすか見ようとするが、機械のパーツから成るわけではない生物体は発生の時間の中で欠損を補い、健康なマウスが生まれてくる。このマウスの胚への介入の話は、タイム・パラドックスを扱ったSF(原因を除去したはずなのに現在に変化は起こらない)を連想させる。(1/16)