心の病気はなぜ起こるか うつ病と脳内物質 高田明和

  • 進行麻痺(要するに梅毒)についても、心因性と思われていたというのは知らなかった。ボードレールニーチェの頃はそうだったわけだ。
  • 精神分析の没落という言葉が使われている。治療法としての精神分析などという考え方からは遥かに遠くに来てしまっているのだと思っていたが、まだそういうところに身を置くジャンルもあるのか。薬で治るものは治るとわかったために、かえってそういうことに惑わされずに精神分析が何であるかがくっきりと見えてきたというべきだろう。「お金で買えない価値がある。買えるものはマスターカードで」。買えないものはけっして買えない。治療で買えるようになるというものではない。精神分析は病者のためのものではなく、人間のconditionについての基本的な知として読まれうるものだろう。『資本論』が革命のための書ではなく、現にある資本主義社会分析の本として再読されるように。

朝日新聞社〔朝日選書〕(200102)1260円◆8/5(土)@旭屋書店 池袋店