古事記の起源―新しい古代像をもとめて 工藤 隆

  • 年末年始に買った本にはスカも多かったが、これはアタリ。経済学と演劇を経て日本古代文学へという経歴を持つ著者は、古事記が編纂される以前の原像を求めて、ヤマト族のように文字に歌を定着しなかった中国の少数民族三国志の南蛮あたりか)のもとへ調査に行く。「出雲八重垣 妻籠みに」の「妻籠み」とは何だとあなたは思っていたであろうか? 本書には今なお残る「妻籠み」の写真も出てくる。話者と作者が分離しない習俗としての歌垣から作品としての歌へ。今日は初映画としてフィルムセンターでひばり、チエミ、いづみの青春映画(であろう)『ロマンス娘』(1956年)を見たが、三人娘が歌うのを見ながら、私の頭にはともすれば「歌垣」という言葉が浮かんでいた。

中央公論新社 (1200612)◆882円◆1/9(火)@ブックファースト 銀座店