歴史のなかの天皇  吉田 孝

  • これと『漢文の素養』と買って帰り、宵と、ページを閉じてひと眠りしたあとの暗い明け方にほぼ読み終える。信頼のおける学者の確かな記述を久しぶりに読んだという気がする。けたたましさとは無縁の、淡々と事実を積み重ねてゆくやり方で、地理的な理由によって偶然かくのごとくなった日本文化の重層性(全とっかえで更新するのではなく、捨てないでとっておく。しかも新しいものも受け入れる。そのため、音と訓(しかもそれぞれ複数の)のように本来異質なものが共存する)について述べる。『太陽』についての拙文公表する前に読んでおくべきだった。江戸時代の天皇が仏式の葬礼によって送られたこと、明記されてある。(彼らがいちいち戒名を持っていたかどうかまでは触れられていない。)天皇という呼称の起源についても聞きかじりを書いたのでこれを読むと冷汗ものだが、とはいえ、専門的知識に基づいて実証的に論じたわけではない拙文もさほど的をはずしているというわけではあるまいとひそかに思う。

岩波書店 (200601)819円◆11/8(水)@Machiya Tsutaya