デリダ なぜ「脱-構築」は正義なのか 斎藤 慶典

  • まったくの偶然であるが、『世界をよくする現代思想入門』についての記事(6/14)に対し、著者の高田氏からコメントがつけられているのに今朝気づいた。私は 『世界をよくする〜』冒頭で例として持ち出された「三角形」の比喩に拘泥しているもので、この本の次のくだりを読み、そのことを思い出したところだった。ちなみに、こちらの記述は頷ける。

たとえば私が、絵本に載っているある種の図形が「三角形」なるものであることをはじめて理解したとき、そこでは何が起こっているだろうか。絵本の中にはさまざまな図形が並んでいるのだが、その中の一つが「三角形」という三つの角で構成された図形であることが理解されたとき、すなわち私が「三角形」なるもの現象にはじめて居合わせたとき、その瞬間に私は眼の前のその図形が「三角形なるもの」の一事例、一現象形態であること、そうであれば眼の前のそればかりでなく他に無数の三角形(の事例)がありうることを、一挙に理解したはずである。もし私が絵本の中の別の三角形を指差されたとき「それも三角形だ」といわなかったとすれば、私はまだ「三角形」なるものを知らないこといなってしまうからだ。つまり、私の眼の前にはじめて三角形なるものが姿を現わしたそのときには、すでにそれは無数に存在しうる三角形の中の一つの(特定の)三角形なのである、これはすなわち「最初のもの」がすでに「反復されたもの」であることにほかならないのである。(pp.32-33)

  • 批判的に読むのは好きではない。できれば著者に全面的な信頼をおいて読みたい。その点、高田氏の本はのっけから相性が悪かった。見直すと1ページ目で「さらなる」なんて使ってるし……。一方この本、まだ読み切れていないのだが、「ジェームス・ジョイス」の表記(p.83)に出会ってギョッとする。

*シリーズ・哲学のエッセンス、NHK出版 (200609)1050円◆11/15(水)@渋谷ブックファースト