大学生の論文執筆法 石原千秋

批評は著者の名前に記号論的価値があるのに対して、研究は肩書きに記号論的価値があるとでも言えそうだ。「柄谷行人」を近畿大学教授の肩書きに正当性を求めて読む読者はいないだろう。しかし、「石原千秋」の文章ならば、早稲田大学教授の肩書きがなければ大した正当性は認められないだろう。これは無名の批評家にとっても事情は同じで、批評は固有名詞の責任において書かれるというほどの意味なのである。どんなに学問的な装いを施しても、批評は最終的には批評家の好みによってものを言っていいジャンルなのだと思う。つまり、批評においては「私はこう思う」という文体が許されるのだ。(p.75)

  • イヤミと受け取る早稲田大学教授多からむ。[批評]に分類しておこう。

筑摩書房(200606)777円◆8/12(水)@TUSTAYA MACHIYA