アンリ・ルソー 楽園の謎  国谷公二

  • アンデパンダン展がなければルソーには絵を発表する場所はありえなかった。では、当時の官展で名声を博していた画家たちの絵はその後どうなった? 国費で買い上げられたそれらは、今では倉庫に積み重ねられ、人目に触れることもないという。仮に触れても、凡庸にしか見えないという。そうした絵にそっくりの構図で(本気でそうした絵がいいと思って)ルソーが描いた絵が、下敷きにされた絵と並べて載せられている。文庫の一ページの半分にモノクロームで刷られてさえ、その優劣は紛れなく、ただルソーだけが使いふるしの紋切型から、誰ひとり見たことのない風景を現出させている。最近の盗作騒動二件(松本零士と槙原、宮崎ジュニアのヘボ詞)を思った。
  • 世田谷美術館のルソー展、早く見たいなあ。


平凡社ライブラリー(200610/〔新潮選書〕初版1983)1365円◆10/29(日)@ブックファースト 銀座店